さかさま不動産
トップさかさま不動産とは?なぜ、つくったのか
線路沿いの古い長屋(ロングルーフ)
Story

「君たちだったら貸すよ」が、 はじまりでした。

さかさま不動産が生まれたきっかけ

さかさま不動産をつくったきっかけは、仲間とつくっていた「ロングルーフ」という場所にあります。

最初から、空き家問題を解決しようと思っていたわけではありません。始まりは、僕が友人の家に転がり込んだことでした。

01CHAPTER

友人の家が、いつの間にか、みんなの場所に。

2011年頃。三重県桑名市出身の僕は、「名古屋で何か新しいことをしよう」と引っ越してきました。

とはいえ、お金はありません。友人のアキオの家に転がり込み、二人のルームシェアが始まりました。

ロングルーフの一室で話す二人
ロングルーフの一室で話す二人

僕もアキオも、誰でもウェルカム。「いいじゃん、来れば?」という感じだったので、友人が友人を呼び、いろんな人が集まるようになりました。なんかいい空気が流れていて、気づくと誰かがいる。そんな場所でした。

人が増えると、だんだん手狭になってきます。

「そのへんの空き家、もっと借りて、自分たちの場所を増やそうぜ」

そんな話になりました。

アキオの柔らかい人柄もあって、近所の大家さんとのつながりができ、少しずつ家を借りられるようになりました。僕とアキオを中心に、仲間と一緒に自分たちで改装していきます。

大家さんと話して、借りる。片付けて、直す。住んだり、お店を開いたりする。

こたつを囲んで笑う二人
こたつを囲んで笑う二人
自分たちで床を張り直した部屋
自分たちで床を張り直した部屋
古い家具を置いた改装後の部屋
古い家具を置いた改装後の部屋
棚と机を手づくりした小さな部屋
棚と机を手づくりした小さな部屋

気づけば、借りている物件は7件。家賃は全部合わせて月15万円くらいでした。

活動していた期間
2011–2018年頃
借りていた物件
7件
家賃の合計
15万円/月くらい

2011年から2018年頃まで続いたこの活動は、僕たちにとって、仕事でもあり、遊びでもありました。自分たちの手で場所をつくって、そこに人が集まる。それは表現でもあったし、「自分たちにも、何かできるんだ」と思える経験でもありました。

空き家で何かをしたかったというより、やりたいことをやろうとしたら、空き家を貸してくれる人がいたんですよね。

02CHAPTER

「君たちのことが、よくわかった」

よく覚えている出来事があります。

飲食店をつくろうと、物件を改装していたときのことです。近所に、犬の散歩で通りかかるおじさんがいました。

改装中は音も出るし、ご迷惑をかけることもあるので、僕は道を通る人に積極的に挨拶していました。たぶん、庭師をやっていた頃の癖です。

そうしていると、おじさんも少しずつ声をかけてくれるようになりました。

「できてきたねえ」

「ちょっと中、見せてよ」

そんなやりとりを重ねながら、お店ができあがっていきました。

古民家飲食店「ぶち」の店内
古民家飲食店「ぶち」の店内

いざ営業が始まると、今度は僕がキッチンで洗い物をしたり、簡単な料理をつくったりしているわけです。

それを見たおじさんが、不思議そうに聞いてきました。

「あれ? 君、大工さんじゃなかったの? シェフなの?」

「いやいや、違います。みんなでやってるんです」

その頃は会社もなく、僕の個人事業として、仲間と一緒に運営していました。

そして、ある日。

「君たちのことがよくわかった。実は空き家を持ってるんだけど、見に来る?」

そう声をかけてもらったんです。

当時の僕たちは、空き家と聞くだけでテンションが上がるくらい、すっかりハマっていました。もちろん、見に行きます。

家には荷物も残っていましたが、僕たちからすると、それも含めて自分たちでなんとかしたい。

「片付けも改装も、自分たちでやります。このまま貸してもらえれば大丈夫です」

大家さんは、僕たちが自分たちで直して使うことを、すでに知ってくれていました。家賃も、こちらの希望に合わせてもらえました。

「ぶち」の前で、地域の方と話す
「ぶち」の前で、地域の方と話す

振り返ると、僕たちが物件を見つけたというより、大家さんが、僕たちを見つけてくれたんだと思います。

03CHAPTER

大家さんだって、選びたい。

活動を続けていると、知り合いや、そのまた知り合いから聞かれるようになりました。

「僕も物件を借りたいんですけど、いいところ、ないですか?」

安く借りられて、自分たちで改装できる。そんな物件は、一般的な不動産サイトを探しても、なかなか見つからなかったようです。

でも、僕たちにも特別な探し方があったわけではありません。

「借りたい地域のおじいちゃん、おばあちゃんに聞いてみたら? 僕たちも、そうやって借りてきたから」

そんな答えしかできませんでした。

一方で、大家さんからも相談をいただいていました。

「君たちみたいに、自分たちで直して、楽しく使ってくれる人に貸したい。誰かいない?」

借りたい人はいる。貸してもいいと思っている人もいる。

ただ、大家さんは、誰でもいいわけじゃないんですよね。どんな人が、何をしたくて、どう使うのか。それがわかって、初めて「貸してもいいかな」と思えることがある。僕たちが借りられたのも、そういう出会いでした。

外から見れば「空き家」でも、持っている人からすれば、自分や家族の大切な家かもしれない。空いていることと、誰にでも貸せることは、別の話です。

だったら、先に、借りたい人のことを知ってもらえばいいんじゃないか。

どんな人なのか。何をやりたいのか。なぜ、それをやりたいのか。

その想いを記事にして、大家さんに読んでもらう。そして「この人と話してみたい」「この人になら貸したい」と思った大家さんから、声をかけてもらう。

物件を出して、借りる人を募集するのではなく、借りたい人が自分の想いを出して、貸してくれる人と出会う。

その順番を、さかさまにしました。

もちろん、近所で毎日顔を合わせるような関係を、そのままウェブでつくれるわけではありません。でも、相手を知り、話してみるきっかけなら、つくれると思ったんです。

04CHAPTER

あの頃の僕たちが、使えるものにしたかった。

さかさま不動産では、借りたい人にも、大家さんにも、相談・掲載・出会いのための利用料をいただいていません。

そこにも、ロングルーフでの経験があります。

当時の僕たちは、本当にお金を持っていませんでした。その僕たちが使えない仕組みをつくっても、しょうがないと思ったんです。

何かを始めようとしている人には、そのお金を、これから始めることに使ってほしい。大家さんの「この人に貸してあげたい」という気持ちにも、手数料をいただく以外の方法で関われないかと思っています。

もちろん、会社として続けるためのお金は必要です。だから、活動の中で得た経験や知見をもとに、自治体や企業と一緒に仕事をする。そういう形で、この取り組みを続けています。

一件つながったら、いくらもらう。

それも一つの方法ですが、僕たちは、そこに収めずに考えてみたいんです。

借りたい人と、貸したい人からお金をいただかなくても、続けられるのか。その先に、不動産と人との、違う関わり方が生まれるのか。

まだ模索している途中ですが、このやり方で、どこまでできるのかを試しています。

05CHAPTER

僕たちに起きたことが、次の誰かにも。

「ぶち」の前で、仲間と
「ぶち」の前で、仲間と

僕たちは、場所を借りて、自分たちで直して、人と出会う中で、できることが増えていきました。

最初から、全部できたわけではありません。やりながら覚えて、自信がついて、また次のことをやってみる。

その始まりには、「君たちだったら」と貸してくれた大家さんがいました。

あのとき場所を貸してもらえなかったら、始められなかったことは、たくさんあったと思います。

だから今度は、誰かが何かを始めようとしたときに、その人と、一緒に面白がってくれる人が出会えるようにしたい。

「こんなこと、やってみたいんです」

「それなら、うちを使ってみる?」

僕たちの始まりにあった、そんなやりとりが、ほかの誰かにも生まれてほしい。

それが、さかさま不動産をつくった理由です。

株式会社On-Co 水谷岳史

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