• マガジン

 CASE3 昔ながらの横丁で駄菓子屋を作りたい!

あいざわけいこさん ( みんなで駄菓子屋 ( 仮 ) 店主 )

1967 年(昭和 42 年)生まれ。
グラフィックデザイナー、まちの記録写真撮影係。社会を彷徨いながら、2021 年 12 月から駄菓子屋のあるじになり、地域の子どもたちと小さ
な小さなコミュニティづくりの真っ最中。目下の野望は、常連の子どもたちが成人した時に、駄菓子屋で初めてのビールで乾杯してもらう事。

借り手さんの視点

みんなで駄菓子屋 ( 仮 ) 店主
あいざわけいこさん

街並みに惚れ込み通い詰めた大門

江戸時代、大規模な遊郭があった大門。前からこのまちの雰囲気がすごく好きだったの。最近はレトロブームで再評価されてるけど、当時はもっともっとディープな雰囲気で。そんなところに惹かれて一人でまちを歩きながら写真を撮ったりしてました。

さかさま不動産のみんなとは昔から知り合いで、この近くで彼らが空き家でシェアハウスをやっていたのを知ってましたし、On-Co の活動や思想にも共感してたので、「いつか大門でも楽しいことをやってくれたらいいのにな」なんて思ってました。

まさか自分でお店を開くなんて思ってもいなかったんです。そんな私が駄菓子屋を始めようと思った大きなきっかけはコロナ。それがなかったらやっていなかったでしょうね。

コロナが流行る前、「大門まちづくり友の会」の活動に関わらせていただくようになって、本業のグラフィックデザイナーとしてイベントのチラシを作ったり、お祭りの写真を撮ったりと、まちのお手伝いをするようになっていたんです。そこにコロナが蔓延してきてイベントはすべて中止に。特に友の会主催で、この横丁でやった菓子まきとお餅つきはすごく良いイベントだったから、ずっと続くといいねって楽しみにしていたのにできなくなっちゃった。それが残念でならなくて。

悶々とした気持ちで一年を過ごして、このままでは本当にダメだって思ったの。もう自分でやるしかない、と。子どもたちが横丁で遊べる日常を再び取り戻したい。先の見えないこんな状況を、子どもたち
や若い世代に押し付けることはできない。そう思い立ってさかさま不動産のみんなに力を借りることにしました。

予想以上に苦戦した物件探し

まちの中に子どもたちが日常的に立ち寄れる場所があるといいなと思い、それなら駄菓子屋さんしかないと。場所は、あちこち探して結局ここ以外になかった。他の空き家は道路に面してて危ないと思ったのですが、この横丁は車が通行できないので安心。

だけどね、そこからが大変だったんですよ。持ち主がわかる空き家は直接交渉したけど見事に全部断られちゃった。「他人に貸して何かあったら嫌だな」って思うんでしょうね。

あとは空き家のように見えて実は倉庫代わりに使っていたり。大家さんが不明な物件についても調べてみたんだけど、登記簿に載っている人たちはみんな亡くなってしまっていて。相続もされていないことがわかって途方に暮れていたら、奇跡的にここの建物の持ち主さんが見つかったんですよ。ちょうど相続された直後でタイミングが良かったみたい。

でも案の定、断られました。ご高齢だし県外にお住まいの方だったので、いきなり知らない人がダイレクトに連絡してきても困惑するのは当然ですよね。

挑戦を後押ししてくれるさかさま不動産の力

そこで、いよいよさかさま不動産が力を発揮してくれたんです。口で説明してもダメだということで、大急ぎで「サイトに載せる ” やりたい想い ” を作って!」とお願いしました。

読んでもらいたい相手はここの大家さん一人だけ。サイトを見せながら私の想いを伝えてもらいました。おかげでついに大家さんの方から「そんな想いを持って使ってくれるならぜひ」と言っていただき、晴れて借りることができました。

オープンに向けての改装でもさかさま不動産の知恵と力をたくさん借してもらいました。内装の DIY 作業をワークショップにして、まちの人も参加できる仕掛けにすることにしました。

そもそも私にとって最終的な目的は駄菓子屋をやることではなく、まちの人々や子どもたちが笑顔で集まれる場所や機会を作ること。そういう意味でもお店ができるまでのプロセスがすごく重要だと思っていたんです。クラウドファンディングや公的な援助も受けず、自分の資金で開店を目指していたので、途中でもう無理かもしれないって思うことが何度もあったけど、たとえ途中で断念しても、みんなが関われるプロセスがあっただけでもやった価値があったと思えました。私一人ではとてもここまでできなかったですね。

障害や難題を乗り越えながら、みんなのおかげで無事オープン。最初に思い描いていた感じと始めてからの現実とでは、がらっとフェーズが変わった感じかな。

子どもたちとの日々のやりとりの中で、嬉しくなるようなエピソードもたくさん生まれています。

オープン後、近所の公園にお菓子のゴミが落ちてたことがあって、「駄菓子屋のせいだ」って言われちゃったんだけど、子どもたちが自発的に「ゴミを捨てないようにしよう!」って呼びかけ合ってくれました。二階には使い道を考えずにとりあえず作ったロフトがあって、そこに本棚を設けて、「コタツで自由に本が読めるようにしよう!」と、アイデアを考えてくれる子もいるし、オープン1周年記念の企画を提案してくれる子も。

今の子どもたちってみんな優しいの。すごく気遣いもできる。私はただここにいるだけなのに、子どもたちが常にイベントを起こしてくれるみたいな毎日。この場所をいつか次の世代に引き継げるんじゃないかなって予感がしています。

注目度が上がってもずっと変わらない、さかさま不動産のスタンス

「もともと子供が好きだったのか?」って聞かれると疑問だけど(笑)。でも今や、毎日子どもたちに「あいざわさーん!」て呼ばれまくるようになっちゃいましたね。思っていた以上にかわいくて、すごく楽しい。

同時に「大人としてちゃんとしなきゃな」って思わされますね。親でも先生でもないけれど、悪いことをしている様子を見たら正しく叱ってやらないといけないんだろうなって。自転車の停め方がダメだったら、自分で直すように言って聞かせますよ。この子たちの将来に関わる大事なことだから。そういうところが私自身の大きな変化なのかも。

さかさま不動産の仕組みがまだ形になる前から応援してきたけど、ローンチしたばかりの頃は、「どうやって利益を生むの?」とか、「継続できるの?」みたいなことばかりに関心が集まって、なかなか本質のところが理解されない感じでしたよね。いま自分でお店を作ってみて、不動産は出会いも貸し借りも本当にご縁のものだなって実感できる。さかさま不動産はそのご縁を何より大事にしているのを肌身で感じます。最近は注目度も上がって成長ぶりが目覚ましいですよね。それなのに彼らが親身になって動くところは最初の頃から全然変わっていない。今や周りが放っておかなくなったってことでしょうね。

▽「さかさマガジン」の全文はPDFでも読むことができます。