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CASE2 街のオーダーメイド自転車を作りたい。

ダビッド・ユウさん
(FUN OSU/SETO GINZA 代表)

1995 年生まれ、愛知県名古屋市出身。
高校卒業後, やりたいことを探してた時に” オーダーメイド自転車” に出会い。天職だと思い働き出し、実践認められ2018 年独立。FUN NAGOYAOSU,SETO GINZA 現2 店舗オーナー。現在、ART の個展スペース、レンタルキッチン貸出しをしている。枠に捉われない、自転車×◯◯ 皆さんの生活が楽しくなるようなイベントや、life style、work style を提案し、発信している。

藤田恭兵さん(大家)
(株式会社On-Co / さかさま不動産)

1992 年生まれ 愛知県大口町出身。
モラトリアム原体験から、大学時代に新社会人向けの教育コンテンツ作成とコミュニティ運営を行う会社を設立。インターン開発を進める中、集まれる場の必要性を感じ、2015年に空き家を活用したシェアハウスを立ち上げたのちに水谷と運営体制を統合。最近は主にmadanasaso に住んでいる。

大家さんの視点

藤田恭兵 さん

瀬戸の商店街で空き家のオーナーに

5年ぐらい前、瀬戸で空き物件を買いました。ゲストハウスをやっている友人に「瀬戸、面白いよ。遊びに来てよ!」って誘われて、行ってみたら確かに面白かったんです。瀬戸ってやきものの産地だからなんでしょうけど、まちのあちこちに陶器でできた置物とか謎のキャラクターみたいなものが置いてあったりするんです。道に突然、顔はめパネルがあったりして(笑)。それだけでも面白くてたまらない。そんなものたちがまちや人にも自然に受け入れられていて、いい雰囲気だなと思いました。

独特の個性があるのに、メディアであまり注目されていないっていうのも逆に魅力で。瀬戸で何かやってみたいと思い始めた頃、銀座通り商店街の中にいい物件があるけど話聞いてみる?みたいに話が進み、具体的なアイデアはまだなかったんですが、思い切ってここを購入しました。

当時、若い子が商店街の物件を買ったということでみなさんが興味を持ってくれて、行政の人にもお会いさせていただきました。みんなすごくフレンドリーで優しかったんです。おかげでまちにもすっと馴染めました。

バスケ仲間から大家と借り手という関係に

いま、僕が大家でダビくんがそこを借りて自転車屋さんをやってくれているという関係ですが、出会いはお互いが名古屋に住んでいた頃、インスタグラムを通じて「近くでバスケやってるよ」って連絡をもらったのがきっかけ。一緒にバスケやりながら仕事のこととか話したりしていて、ダビくんが大須に続いて2 店舗目を出したいと考えているのを聞いて「瀬戸、面白いよ」って話したんです。すぐ興味を持ってくれて瀬戸にも足を運んでくれました。

ダビくんとしては名古屋市内でと考えていたみたいなんですけど、瀬戸も候補地として検討してくれました。本当は僕自身がもっと瀬戸に関わって、いろいろやりたかったという想いは今も抱えています。他の仕事やさまざまな事情があって最後までコミットできなくなってしまったので、それならば、「この人!」と思える人に後を託したかった。

そこへタイミングよくダビくんが来てくれて、さらに「little flowercoffee」(※ 1)さんが出店してくれたり、古着屋の「TRANSCELLUSED CLOTHING」(※ 2)さんが初めてのお店を瀬戸に出してくれたりと、次々に若い世代のプレーヤーを呼び込んでくれています。もちろんダビくんの人柄があってのこと。

もう一つ大事なものがあるとしたら、この商店街を中心にまちを盛り上げようと力を注いできた人たちが、僕らの前にもたくさんいたということだと思います。初め、単純に興味を感じて瀬戸に関わるようになった僕は、そういう人たちのことを後から知ったんです。いまこうして盛り上がっている様子を見ていると、時間が流れても、関わった人の想いや挑戦する情熱って全部繋がっているんだなって実感します。

まちの未来を変える存在へ。
大家として期待すること

家族揃って住居も瀬戸に移したダビくんファミリーを見ていると、子供って、まちのみんなに見守られて育つんだなっていうのがよくわかります。ダビくんが来て、瀬戸のまちがこんなふうに盛り上がればいいなって思っていたことも、期待を超えるスピードで進んでいる。やっぱりダビくんだから実現できたんだろうなと思いますね。

個人的にも大家としても、これからに期待することはたくさんありますよ!自転車の販売は、単にビジネスとしてだけでなくまちのPR にも繋がると思うし。ダビくんの自転車ってとにかくカッコいい!特に若い世代の人たちにとってはそのカッコよさが乗る人自身のアイデンティティになるので、それをSNS で発信してくれたら、即、まちの広報にもなります。

さらに自転車は、まちを訪れる人たちの交通手段になるので、観光にも貢献してくれそう。すでに行政の人たちを巻き込んで、レンタサイクルや市民のモビリティとしての価値を見出し始めてもらっていると聞いていますし、これはぜひ実現して欲しいですね。

大家さんの視点

FUN OSU / SETO GINZA 代表 
DAVID YU さん

未知のまち、瀬戸との出会い

一般的にショップの2店舗目って1号店以上に利益が見込める場所に出すのが重要だと言われています。これまで名古屋の大須でやってきた僕もいろんな人からそう聞いていたし、恭ちゃん(藤田)と出会うまでは、2 号店出すなら都市部がいいんだろうなと当たり前のように思ってました。

でも彼の活動を見たり聞いたりしているうちに、ローカルも面白いかもしれないって感じたんですよね。同世代でここまで面白いやつはまわりにはいなかったし、そんな恭ちゃんが面白がってるまちだか
ら、瀬戸にも自然に興味を持つことができました。とはいえ、それまでまったく行ったこともないんで、やっぱ最初はやっぱりピンとこなかったですよ。実際に行ってみるまでは、何もないまちなんだろうなとも思ってました。

でも実際に足を運んでまちの人と触れ合う機会を重ねていくうちに、最初のイメージとは違うなと気づいたんです。

まちを諦めていない人たち

恭ちゃんと通っていたのが3年ぐらい前のこと。当時、この商店街も寂れたシャッター街って言われていて、新しいお店もあまりなかった。でもまちの人たちに話を聞いていると、温度感が高いのが伝わってくるんです。みんな、このまちを全然諦めていない。そういうまちってきっと伸びていくんじゃないかなって、すごくポテンシャルを感じました。

もちろん出店を決めるまでにはいろいろ考えましたけど、振り返るとその時に感じた気持ちが一番大きな決め手になったと思います。2年前の1月にオープンしたんですが、コロナの真っ只中で商店街にはまったく人がいなくて、「大丈夫か?」みたいな状況(笑)。でもそれってこの商店街のデフォルトの状態を知らない僕にとっては、「まあ、こんなもんか」ってところからスタートしてるとも言えるわけで。

やがてコロナも徐々に落ち着いて、最近はまわりに新しいお店もたくさんできたし、都心部に比べて土地が安いというのもあって市内に新しい家がバンバン建っている。子育て世代のファミリーも増えてますね。僕らのような若手が始めた店に対して「こういうお店があって良かった」って言ってもらうことも多くなりました。

逆に昔から瀬戸で暮らしている地元の人たちからは「活気づけてくれてありがとう」と言っていただいたり。まちに求められていることを実感できるのが嬉しいですね。

そこにいる人たちの想いがまちを変えていく

僕にとっては縁もゆかりもない場所なのに、けっこうすぐ馴染めました。瀬戸に興味を持ったことを機に、歴史を遡って知っていくうちにわかったことですが、ここには昔からやきものという地場産業が根付いていて、他所から来た職人さんたちを受け入れる土壌がもともとあるんですね。僕もみなさんに本
当に温かく迎え入れてもらい、最初の一年でたくさんのご縁が繋がりましたし、過去にもこのまちを盛り上げようと尽力した人たちがたくさんいたということも知りました。いま僕らがそんな先輩たちの想いを受け継いでいるんだと感じます。

オープン直後は、瀬戸に店を出したって言うとみんなに「なんで瀬戸なの?」って驚かれましたけど、僕は理論的かつ感情的に、その理由を自分の言葉で答えてきました。するとそこに共鳴してくれた人たちが僕と同じようにまちに足を運び、まちの人たちと触れ合って、それぞれ出店を決めてくれたんです。展開の早さに僕の方が「えっ!マジ?」って感じですよ(笑)。でも商売をしてるとわかるんですけど、自分で「ここだ!」って思える場所でなければ、どんなに人から勧められてもやらないと思うんです。僕の言葉はきっかけに過ぎなくて、彼らが実際にまちの空気に触れてそれを感じ取ってくれたからだと思うんですよね。つまり間違いなく瀬戸のまちに魅力があるんだっていう証拠。それをみんなにわかってほしい。

良い時のこともそうでない時のことも知っている昔ながらのまちの人の中には、「盛り上げるなんて無理だ」っていう人もいるけど、僕はそれを覆したい。結局、自分が何を信じるかだと思うから。信じる力が強ければ強いほど、また、一人一人がまちのことを思えば思うほどまちは変わっていく。

それが今、僕がここにいてリアルに思うことです。

さかさま不動産は社会を変える最強のギバー

さかさま不動産がいろいろなまちに貢献し始めている様子を見ていると、やがてはビジネスモデルとして大きな利益を生み出すんじゃないかなと感じます。でも彼らの目指しているのはそこではないことも知っている。最強のギバーだなって思いますね。見返りを求めずに与えるからこそ、違う方向からまた何かが還元される。それをいち早くやっているのがすごいところ。オリジナリティがあり、かつ価値のあるアイデアを実行していれば勝手に名前は知られていくわけですしね。人から何かをしてもらったら、その気持ちをまた誰かに返したくなるのはみんな同じでしょう。関わった人すべてにそういう気持ちを生み出させる、すごく価値のあるプラットフォームですよね。そういう流れが社会を変えて
いくんじゃないかなって期待しています。

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