人と人とがつながる「関係案内所」のような本屋(仮)をつくりたい

1999年の創刊 雑誌『ソトコト』編集者

指出 一正

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山や川が大好き。趣味はイワナとタナゴ釣り。寝ても覚めても魚のことを考えています。
学生時代から約30年間編集の仕事に携わり、東京と神戸の二拠点生活をしながら、雑誌『ソトコト』の編集長を務めています。

やりたいこと

30年間編集の仕事に携わるなか、いつまでもブレなかったのは「心地よい暮らしをしたい」という気持ち。そんな自分を構成する3つの情景が重なり合った本屋をつくりたいです。

やりたい理由

安全な範囲で人の息づかいを感じられる「関係案内所」にしたいです。
私にとっては中高生時代に通った地元の釣具店。大人たちの話にワクワクしました。同級生ではない斜めの関係性を持ててよかったと思っています。

希望物件の基本情報

エリア:東京都23区
理想賃貸金額:要相談
理想購入金額:要相談
物件の種類:要相談
物件の広さ:80〜120平米ほど
その他の条件:路面物件を探しています。会社機能の移転も考えており、ある程度の広さ、もしくは2階・3階フロアなどがあるのが理想です。
1階は公共スペースとして開放することも検討しています。

PROFILE

自己紹介

群馬県高崎市で生まれ育ちました。小学生の頃からサードプレイスは川。特技は魚が笑顔の写真を撮ること。寝ても覚めても日本の淡水魚のことを考えているほど、その知識や好みが自分の真ん中にある、一言でいうとオタクです。

大学4年生のときに、山と溪谷社が発行するアウトドア雑誌『Outdoor』の編集部にアルバイトで入りました。編集の仕事をしながらも、やはり考えているのは魚とその暮らす環境のこと。どうしたら川にいる魚が元気になるかな、釣りができる環境を保てるかなということでした。

そして趣味の世界からストレートではなく、生態系やエコロジーといった大きな切り口で発信することが、自然が豊かになり、魚を元気にできるかもしれないと考え、雑誌『ソトコト』に携わるようになりました。

3.11の震災前のあたりからは少しずつ社会の変化を感じ、「ソーシャル」や「ローカル」「人」を中心とした目線へと転換しました。雑誌だけでなく、地域やコミュニティの編集にも関わらせていただいています。

やりたいこと

「ちょっと時間ができたから寄ろうかな」「何か楽しいことがありそうだな」と回遊してもらえるまちの本屋(仮)をつくりたいです。

そのもとにあるのは、自分の中で大事にしている3つの情景です。

ひとつめは、大学進学で群馬県から上京し、東高円寺にある本屋の裏の小さな部屋で暮らした情景です。昔ながらの細い商店街の中にあり、人生の第二フェーズのような成長期を形成した生活そのものが、今でも東京というまちをローカルとして向き合った時に大事にしている気持ちです。

ふたつめは、2000年に映画化された「ハイ・フィデリティ」です。音楽への愛があふれる一作で、中古レコード店を経営している音楽オタクの男性を中心に展開するコメディです。
個性豊かな店員たちが織りなす雰囲気が大好きで、いつか店を持つ時には、「ハイ・フィデリティ」のようなチームでやりたいと思っていました。

みっつめは、早川義夫さんの本『ぼくは本屋のおやじさん』。ロックグループをやめ、小さな書店を始めた著者の赤裸々な奮闘記です。クリエイターが個人店をつくりはじめた原書のようなもので、時間軸がとても素敵です。

これら3つの大事にしている想いや場所、本や映画などが自分を構成しており、すべてが重なり合った空間をつくりたいと思っています。

また、私が場づくりにおいて意識しているのは、たったひとりでも来られて、自分の安全な範囲で人の息づかいを感じられること。ざわざわするものが少しなくなるような空間です。本屋(仮)もその感覚でいます。

本屋をつくり込むというよりも、人の息づかいがあるような場ですね。

会社の機能もその中に置いておきたいと考えているため、今回は東京都内で探しています。

やりたい理由

魚が大好きだった私には、川以外にもうひとつ居場所がありました。それは地元の小さな釣具店です。中高校生だった私が遊びに行くと、いつもよくわからない職業の大人たちが迎えてくれました。夜になるまで好きな魚の話をしたり、北アルプスの川の話を聞かせてくれたり。子どもの私には夢のような未知の世界でした。
振り返ると、同じ層にいる同級生とは別の関係性があったことが、本当によかったなと感じています。

その原体験から、世代や地域を跨ぎ、ホームのようなアウェイのような曖昧さを持つ「斜めの関係性」をどう生み出すのかを常に考えています。

近くにいるけれど知り合えていない人たちもいれば、遠く同士だけど運命のように気が合いときめくような出会いもあります。人と人との関係性が生まれる場所は、私にとっては釣り具店というニッチなところでしたが、本屋はもっと広く、滞留や接触を生み出す仕組みを持つ「関係案内所」になるとイメージしています。

本というのは天気や季節のように、会話のきっかけをつくれるツールになります。話すことがない時でも、目の前に置かれた小説や作家の話ができたり。ソトコトも全ページ読んでいただかなくとも「今回は関係人口の特集ですね」「関係人口に興味あるんですか?」と知らない人同士が話をするきっかけになれば、本の役割として一つの大義は果たせているのではと思っています。

「本屋をやりたい」という発想が、「本屋を残さなければならない」使命感ととらえられることもありますが、そうではありません。
個人的な考えとなりますが、本屋が生まれてから、店主が歳を重ねていくなかでさまざまな情景を見てきて、高齢化を迎え、考えた結果、畳まれることに関しては、残念な気持ちの前に、お役目を果たされたのだろうなという感覚のほうが強いです。

世の中の流れで役割を果たされた中から、新しい役割を見出した世代が、また文化をつくっていくのは連鎖です。最近は日本各地に小さな本屋が生まれ、それぞれとても素敵な文化を発信されています。そういう本屋が各地にあるのは、地域を超えて社会が盛り上がる一つ。孤軍奮闘するよりも、互いに共生していくのに、本屋という手法でできるといいなと個人的には思っていることではあります。

できること

「好きなものは好きでいい」と安心できる場づくりが得意です。

ソトコトはじめ指出の活動を通じて、みなさまが未来への視座を期待してくださいます。とてもありがたく、社会気分を言語化することは、私が担えることかもしれません。

一方、実は私自身は過去を振り返ってばかりの人間です(笑)。ひたすら1970年頃のスウェーデンの釣り具を研究したり、昭和50年代の水辺の写真集を眺めています。最近はイワナのことだけを書いた本をつくろうかな…なんて妄想でほくほくしています。

いち早く情報を追わないといけない出版業界にいながらも、自分の好きなものを追いかけ続けてきました。好きなものというのは、自分を満足させてくれる以上でも以下でもありません。流行も関係ありません。人と比べる必要もありません。好きなことを続けていくことが、たまたま時代に合うタイミングも来ると感じています。

オタクの編集者として、いつまでもブレなかったのは「心地よい暮らしをしたい」という気持ち。

これから本屋(仮)の書店主として、自分がおすすめする本も含めて、来てくれる人にとって「よい日だったな」とご機嫌な感じを生み出していけることを楽しみにしています。

物件情報

エリア:東京都23区
理想賃貸金額:要相談
理想購入金額:要相談
物件の種類:要相談
物件の広さ:80〜120平米ほど
その他の条件:路面物件を探しています。会社機能の移転も考えており、ある程度の広さ、もしくは2階・3階フロアなどがあるのが理想です。
1階は公共スペースとして開放することも検討しています。

 

その他

我が家のリビングには、大切にしているアメリカ製のウォールナットの大きな本棚があります。
自分自身をつくってきた大切な本が並んでいるのですが、3年間ほどのスパンでなんとなく入れ替えをしています。つまり残っているのは、僕の本棚の中でサバイブしてきた生態系です。

例えば、小さなときから愛読している絵本「ぐりとぐら」。友人と熱くビートジェネレーションについて語り合った想い出。山登りサークルの仲間と読んだ時代のものなど。ある意味、系統立てられていない雑多な本棚。そんな本屋になる可能性が高いと思っています。

またソトコトDAOを立ち上げ、改装メンバーを募るなどして、住まずともつながる新しい地域コミュニティの形の実験も考えています。