一般社団法人ツギノバ(Okinoerabu Base)代表 / 大久保 昌宏
私たちは沖永良部島の知名町で、飲食店・コワーキングスペースを兼ねたコミュニティースペースを運営しながら、町への企業誘致や都市部からのワーケーション、テレワークの受け入れ、町内の農業・漁業といった第一次産業をはじめ、商工業者等への島外からのアルバイト等の受付窓口といった関係人口創出や移住推進の取り組みを行っています。
私たちにとって沖永良部島・知名町は、最北の離島地域、北海道・利尻島(利尻町に本社機能を有しています)に次ぐ2番目の拠点です。実際にその地域に暮らし、地域内外の様々なバックグラウンドを持つ人々と関わりながら、日本全国、北から南、西へ東へ魅力ある人たちを地域とつなぎ、その地域の未来を次の世代につないでいくための仕事を行っています。
Q1沖永良部島はどんな気候ですか?
亜熱帯性気候に属し、年間を通じて温暖な地域です。
降水量は梅雨の時期が特に多いですが、各月ともほぼ一様に降るのが島の特徴。
台風は6月ごろから来襲し、8月・9月にかけてが最も多くなります。島の人たちは風速20mにも動じない強者揃いでとても頼りになる存在です。
冬でも15℃前後で、朝晩少し冷え込む時や風が強い時などは少し肌寒く感じるかもしれませんが、薄手のコートなどがあればOK。冬でも陽が出ているとジリジリとした暑さを感じる日もあります。ただ、天気が変わりやすく雨もよく降るので、撥水機能のあるウィンドブレーカーが1枚あるととても重宝します。
Q2島へのアクセス、島での交通手段は?
島外からの交通手段は、飛行機で鹿児島から約1時間15分/沖縄から約50分、船で鹿児島から約16時間/沖縄から約6時間30分、奄美群島間の路線も運行しています。
鹿児島県には離島航空割引といって、離島の住民が飛行機や船を利用する際、奄美群島~鹿児島間と奄美群島各離島間の便については正規料金の半額程度で利用できる制度があります。
島内の交通手段はバス・タクシー・レンタカーなど。
住む地域にもよりますが、生活するうえでは移動に自家用車を利用する方が多いです。
公共交通機関であるバスは生活路線を結ぶルートになっており、観光地を巡るのには不向きですが、一部の区間を除きバス停以外でも乗降が可能です。
Q3どんな人が住んでいますか? 島に住んでいる人はどんな生活をしていますか?
人口の構成比としては、男女比はほぼ同数、年代構成は60代以上が5割程度を占め、50代以下の年代は同程度の割合で分布しており、10代後半〜20代前半が最も少なくなっています。
沖永良部島は合計特殊出生率が全国でもTOP10に入る水準を保っており、子育てがしやすい地域として数字によく現れています。
職業の割合としては農業従事者が最も多く、その他の職業に携わる人も7〜8割ほどが島内の施設等で働いています。
Q4島の人たちの性格は?
沖永良部島は、歴史的に南北文化の交差する交易の要路でもあったことから、島外からの技術や文化を取り入れることに柔軟で、フレンドリーな人が多い印象です。
移住者の受け入れにも肯定的で、さかさま不動産を通して大家さんの案内があればなおのこと、どの集落も総じて暖かく迎え入れてくれる空気感ができています。
ゴミ出し等のついでに往来で近所の方と話し込むこともしばしば。集落にどっぷり浸かって暮らしているIターンの移住者さんに知名町の印象を聞いてみたところ、「みんな人が良すぎて騙されないか心配している」とのことでした。
Q5まったく地縁がなくても移住できますか?
割合としては島出身者のUターン・2世3世など島にルーツのあるRターンの移住者が多いですが、
まったく縁もゆかりもない状況で移住し、農業に従事しているというIターンの方などもいらっしゃいます。やりたいことが明確であればあるほど、地域の方の協力も得られやすい環境だと思います。
Q6移住初心者が住むのにおすすめの地域は?
知名町の例で言うと、ひとまず島に暮らして様子を見てみたいと言う場合は、町の中心地で、役場があり商店や飲食店も多く集まる知名(ちな)・瀬利覚(せりかく)・小米(こごめ)周辺が便利かもしれません。広い土地や家に住みたいとか、のどかな集落で様々な年代・性別の方と関わってみたいなど、目的別で探してみるのもおすすめです。周辺の島々や集落ごとにも気質が異なりますので、知名町を拠点に、自分が落ち着ける居場所を探してみるのも楽しいですよ。
Q7島にはどのような物件が多いですか?
メインストリート周辺にはテナントや集合住宅もありますが、住居として多いのは平家の一軒家タイプです。台風の多い地域ならではの鉄筋コンクリート製の建物も多く、庭にはサンゴの岩を積み上げた塀や木を植えて、強風や潮風に備えた作りになっています。
Q8島にはどんな施設がありますか?
町内には医療・介護施設、保育園、幼稚園〜高校までの教育機関、図書館、体育館、文化ホール、スポーツジム、コンベンション施設、宿泊施設などがあり、スーパー、コンビニ、ホームセンター、ドラッグストア、家電量販店、書店など、生活に必要な物資も島内でひと通り手に入ります。
衣料品の取り扱いが少ないため、オンラインショップを利用するか、島外へお出かけの際に調達する必要があります。
Q9島ならではの生活習慣などはありますか?
①定刻のチャイム
毎日朝7時/昼12時/午後3時/午後5時/午後5時15分/夜9時に町全体にチャイムが響き渡ります。午後3時には、なぜかラジオ体操が流れる不思議。夜9時のチャイムは音量ひかえめです。
聞けば屋外で農作業に従事する人たちへ時刻を知らせる習慣なのだとか。リモートワークでビデオ会議などをしていると「もう!」となることもしばしばですが、1日の時間をお知らせしてくれるチャイムは、慣れればなんだか懐かしく快適です。
②字(あざ)放送
回覧板制度が無いという理由もあるのか、集落に放送機能があり、集落毎の催事や予定などは放送で周知されます。聞き耳を立てて字のスケジュールを把握しています。
③通りすがりのあいさつ
小学生・中学生のこどもたちと道ですれ違うと、元気な声であいさつをされてびっくり。
長年地元で暮らす方々に聞けば、このあいさつの習慣は50年以上前から島で続く教育方針とのこと。地域みんなで子どもたちを見守る、声を掛け合うという習慣が息づいていて、顔見知りかどうか関係なく、子どもも大人もお年寄りも気軽にあいさつしてくれます。
Q10島の生活で大変なことはどんなことですか?
①島内・島外の移動
島への出入りには飛行機か船を利用しますが、便数が少ないため、とくに観光や帰省シーズンは早めに計画を立てる必要があります。風や波の状況で急遽欠航となる場合もあり、運行情報には注意が必要です。
島内の移動に関しては、基本的に街灯がほとんど無いので、夜間の移動には注意が必要です。島の人たちに聞いたところ、暮らしている間に家に懐中電灯がどんどん増えていくのだとか。真っ暗な中で空気の綺麗な日に見上げる星空は、天の川まで見渡せる絶好のロケーションなんですけどね。
②水
水資源豊かな沖永良部島ですが、石灰質のサンゴ礁が隆起してできた島のため日本国内では珍しく硬度200~250の硬水地域となっています。水回りの機材の消耗が激しかったり、料理の出汁が出にくかったり、髪の毛がゴワついたり……特に飲料水については、ミネラルウォーターを購入しているご家庭も多いようです。
③ネット・電波環境
5Gが未整備だったり、携帯電話会社によって電波状況に差があるなど、島のどこでも都心のようなアクセス環境とは言い難いのが現状です。また、光回線の工事は平均で3〜4ヶ月、プロバイダの設置工事のみの場合でも1ヶ月〜3ヶ月を要することがあり、借り先の住宅のネットワーク環境については事前によく確認しておくことをおすすめします。
Q11住宅等の物件の借り方、家賃相場を教えてください
①住宅等の物件の借り方
島には不動産会社がありません。ほとんど全ての物件が所有者さんとのやりとりの中で借りる形が多いです。島で意中の空き物件を射止めるためには、さかさま不動産のような借りたい人が想いを伝えられる場がとても重要だと思います。
②家賃相場について
所有者さんと直接のやりとりの中で借りる形が大半なので、家賃も基本的には所有者さんそれぞれで異なります。とはいえ、住宅用であれば概ね3〜6万円程度、商店や店舗だと立地条件等によっては意外と高額なケースもあります。契約内容をきちんと所有者さんと丁寧に話し合える関係性をつくっておけると安心だと思います。
Q12沖永良部島の魅力を3つ教えてください
①美しくも厳しい自然が身近なこと
ウミガメやクジラが立ち寄る青い海、白い砂浜、赤土と緑の鮮やかなコントラストの畑、豊かな水源、年中咲いている色とりどりの花、鳥や虫の声、満天の星空、激しい雨音、風のうなり声、からだを揺さぶる雷、刈っても刈っても生えてくる雑草、屋根裏から聞こえる正体不明の生き物の足音、びっくりサイズとボリュームの虫たち……島で暮らしていると自然との距離の近さを毎日感じます。最近新たに発見したことは"バッタの突撃は悶絶するほど痛い"ことです。まるで弾丸のようでした。
②集落単位で特色があること。
沖永良部島では集落や自治会のことを”字(あざ)”と呼びます。盛り上がる行事や受け継がれている芸能が字ごとに異なり、同じ町内とは思えないバラエティーの豊かさがあります。小さい島だからどこに住んでも同じですよ、とはとても言えない、深掘りすればするほど飽きない島だと思います。
③ほどよい距離感で接してくれる島の人たち。
島の人と移住者で二分されることなく混ざりあってコミュニティが形成されていて、相互に助け合いながら暮らしている島です。
野菜や果物のおすそわけに助けられたり、自分に一歩踏み出す勇気があれば、困ったことや悩みを聞いてくれるご近所さんが意外とたくさんいて、一人暮らしでも寂しさを感じません。
島の人たちの持ち前のフレンドリーさに引っ張られながら、都市生活では経験できないコミュニケーションを楽しめます。
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